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Nihongo Mayo

日本語教師におけるハラスメント 調査結果概要まとめ

更新日:4月4日


調査対象: すべての日本語教師として働いたことがある人

主な調査場所: Twitter, Instagram, italki (オンライン言語学習プラットフォーム)

回答者: 131名 (127名が日本語ネイティブ日本語教師経験者, 4名はノンネイティブ)


セクハラ・性差別実態

この調査ではセクハラを、性的意図を持っていると見なされる個人を不快にさせるあらゆる行為と定義した。

性差別を、性別や性自認、性的指向を理由に、別の性別と同等の機会を与えられなかったり、不利に扱われたりすることと定義し、これは軽度な苛立ちから重度の人権侵害までを含む、とした。


言葉によるハラスメントがもっとも多い

  • 市民コースの受講者に、アダルト雑誌に出て来るような言葉を日本語で、みんなの前で発せられたり、意味を聞かれたりした。

  • 髪型や格好についても先輩に言われた。人の勝手なのに女性らしくしたらどうだ、など。

  • 講師室で会う人会う人に「あなたはきれい」「あなたもきれい」と連発する50代男性非常勤講師がいる。学生にもそれぞれの国の言葉で「ウォアイニー」「サランヘヨ」と連発していることが学生の訴えで発覚した。教師が我慢していると学生にも害が及ぶ。

  • 海外で教えていたとき、日本語関連のイベント終了後の食事会で、仕事で何度も付き合いのある在外公館(男性)が左隣に座っている部下である20代の女性に対し、「30を過ぎたら羊水が腐って妊娠しても問題が起きるから、早く子供を作ったほうがいい」と発言した。私はその男性の右隣に座っており、当時は30代独身女性。男性も私の年齢を知っている。この発言を非常に不快に感じた。

望まない接触もハラスメント・差別被害者のうち25%が経験。

  • 対面プライベートクラスで、学習者の夫婦生活の話になり、いきなり抱きつかれキスされた。

  • 同僚の年上男性教師に不必要に肩や腰に手を当てられることがある。「お疲れ様」などの言葉掛けと同時なので意図的かどうかはわからないが、不快感を感じている。

  • 学習者からハグなど(文化的にも不適切)。


ショッキングな犯罪行為も

  • 「性的加害、性的暴行」1件

  • 「性的な行為の強要、性的な好意との引き換えにのキャリアアップを約束/ほのめかされた。または反対の場合キャリアに悪影響を与えると脅された」2件

  • 「陰部の露出を含む性的な行為」6件

  • 「オンラインまたは実際のストーカー行為」9件 ハラスメントでは済まされない酷い犯罪行為が日本語教育現場、関係する環境で起きていることが明らかとなった。


結婚・妊娠・出産を期に退職させられた・せざるを得なかった、という回答が14件


多くの国でこのような取り扱いは違法行為である。性差別被害者74名中14件のこのような回答があったことに驚いた。



この調査では、パワーハラスメントや職場のいじめを、身体的・社会的・心理的な嫌がらせやいじめと定義し、軽度な苛立ちから重度の人権侵害までを含む、とした。

部活動での陰湿ないじめの性質に近い内容が多い。


中学・高校の部活動などの経験を経て、地位/年齢が上の者が、下級の人を思い通りにコントロールできて当然である、気に入らないヤツは追い出してやる、という意識がそのまま保たれているのではないだろうか。


罵倒・無理な要求

  • スマートフォンを使って授業をしていたら、同僚男性教員が教室に乗り込んできて大きな声で罵倒された

  • 授業中に毎回主任の巡視があった。授業後に呼び出され「漢字の時間を含めて一字一句自分のいう言葉を事前に書き出してくること」「次の巡視でそれができていなかったら解雇する」と言われた。

  • 勤務開始後半年は試用期間として教育係がつくと言われ (中略) 夜9時半あるいは10時ごろからフィードバックが始まった。授業を見てもらってはいないが罵倒が2時間ぐらい続いた。この教育係について上の人に話したところ、ほかの教育係にかわった。新しい教育係は私の授業を毎回見に来て後ろの席に座っていたが、いつも椅子から落ちそうになって寝ていた。にもかかわらず酷評をされ何のアドバイスもなかった。先の教育係は他の先生方からの信頼があつかったため、同僚の非常勤講師ともうまくいかなくなった。

解雇・退職につながる扱い

  • 日本語学校で男子学生ばかりのクラスを担当させられた。非常勤講師だった。机間巡視中にクラスの2/3ぐらいの学生が携帯の画面を差し出して見せてきた。画面には女性器が映っていた。それについて教務主任に伝えたが、学校側は学生を擁護していた。それ以外でもセクハラと思われるような発言が学生から続いていたので、それについても伝えた。その後、コロナが流行し6月になっても学校が開講できないので待っていてほしいと1週間ごとに教務主任やほかの常勤講師から連絡があった。6月に入り、目途についてと休業期間に対する補償金(公的機関からの支払い)について尋ねると、補償金を学校側から支払わなければならないと誤解し、契約更新の書面も取り交わしていたにもかかわらず、3月末にさかのぼって解雇となった。

  • 常勤が2人、教務主任と私という環境で、業務の負担が契約と異なり、勤務時間プラス20時間ほどのものを、指示された。相談時間は、4時45分からの15分と決められ、目の前にいるのに、メールで指示があった。校長に相談し、改善を求め、3人で話し合いをし、教務主任に仕事の分担がされる形になった。翌日から、目も合わさない、挨拶もないという態度をとられ、仕事にならなかった。結局、ストレスで私が体調を崩し、退職した。現在も、教務主任は変わらず、退職したのは、一昨年1人、昨年の私で2人目だったので、次の同じようなことが起きないよう、改善してほしい。

  • 担当学生から夜に電話してほしいと言われ、緊急のことかと思い電話したら「結婚したい」と言われた。わたしは既婚者で、年齢も伝えたが「イスラム教は重婚できる。年齢も関係ない。わたしは日本人と結婚したい。」と言われた。この学生はクラスを移動したばかりで、さみしさもあり、そのうち飽きるだろうと思っていたが、授業のない週末も連絡が来て、苦痛になった。 在籍管理に相談し、当該学生と面談。「もうプライベートな連絡はしない」と約束。約束した夜に、わたしに「あなたは学校にわたしのことを言った」と連絡が来たため、怖くなり、その学生のクラス変更を実施。ただ、それでも怖くなってしまい、退職を決意した。その学生がクラス移動の際に、上司である副主任(同性)から差別発言。「〇〇先生(わたし)はしょうゆ顔だから好かれちゃったのかな、△△先生はバター顔だから大丈夫ね」と言っていたと聞いた。


不当な扱い・不健康な環境

  • ある大学でのことです。私はそこで非常勤の職員として勤務していましたが、専任として着任してきた人が、張り切って状況を変え、「文部科学省の命令だから」とシラバス作成作業、成績算出作業、学期末業務報告書など多くの作業をそれまでの何倍も課すようになり、給与などの条件も見直されないまま、それまでに比べ何倍も仕事に拘束されるようになってしまいました。 また、自分は非常勤で、あるクラスを受け持ってきましたが、昨年の秋に1科目減らされることになり、「非常勤なので仕方がない」と思っていたところ、その半年後の今年の春に、同じクラスが専任によって受け継がれることが判明、しかもその専任に「クラスの成果物を引き渡してほしい」と言われました。結果その専任は、さらに、そのまた上司から、非常勤に圧力をかけないよう指導があったようでしたが、非常勤としての弱い立場を守ってもらえない自分の弱さをどこにも訴えることができませんでした

  • 校長に(男性:80歳ぐらい)怒鳴られたこと。気に入らないことがあると日常的によくいろんな人に怒鳴っていた。感情的になりやすい校長の相手で私がよくご機嫌取りをしていた。私は校長の話をよく聞いていたが、話を聞いていると私(女性)自身の仕事が全くできなくなる。上司には君が校長と話していると機嫌がいいからその調子でよろしくといわれたこと。女性でニコニコしているのがよかったようだ。

  • 私が20代後半で専任の時、同僚(先輩)から嫌がらせを受けていた。無視される、業務に必要な情報が共有されない、やってもいないことで非難されるなど。さらにそれに同情したらしい非常勤の男性講師(年上独身)からアロマ、紅茶やはちみつなどを渡され、心配している、話を聞こうか、自分は味方だからなど連絡があり、対面でも迫られ、両方きつかった。




※ハラスメント被害に関連したと思われる要素、という設問がたいへんわかりにくい項目になったことをお詫び申し上げます。こちらは交差性 (intersectionality) についての設問でした。

交差性とは、性別、年齢、人種、民族、性的指向、障害、階級、その他の差別形態が重なり合い、独自の状況や影響を生み出すという概念です。 (Center for Intersectional Justice)

たとえば、20代、専門学校卒業、非常勤・女性・地方出身というの教師が都内の学校で差別や不当な扱いを受けた場合、この教師が被害を受けるの原因となる要素を単独で特定することはできない状況が生まれる


年齢差別が最も顕著

本調査を始めたきっかけは性差別発言だったが、顕著な年齢差別の実態が明らかになった。また、「その他」として「地位の上下」も回答者中9%に上った。


職場では地位の上下・年齢の上下に役割の違いはありこそすれ、すべての職員・社員が意見を尊重されるべき対等なパートナーであるという意識が欠如しているのではないだろうか。


セクハラ・性差別・パワハラは相互に関連し発生している

本調査で「セクハラ被害」「性差別被害」「パワハラ被害」すべての被害経験者は131名中42名だった。これは回答者全体の約32%である。 また、ハラスメント・差別被害の経験があると答えた99人のうちの約42%である。


このことから、性差別・セクハラ・パワハラが独立した問題として存在するのではなく、相互に関連し、被害を起こしやすい状況・環境が発生していることが類推できる。



弱い者いじめが顕著・受講生からの加害も目立つ


これまで見てきたように、年齢関係、力関係による加害が被害中の70%となったが、学習者・受講者からの加害も目立つ。


この場合サービス提供者・お客さんという立場も生じるため、被害を訴えにくい・訴えられたとしてもなかなか明確な手段が講じられないことが推察できる。



謝辞

この調査にご協力頂いた皆様、長い質問項目にも関わらず丁寧にご回答いただき誠にありがとうございました。また記事作成までに大変長い時間を要したことをお詫び申し上げます。


まだこちらの記事では取り上げていない回答項目、回答の全具体例などは別記事でまとめさせて頂きます。




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